2015年9月12日土曜日

『進撃の巨人』のテーマとは:英訳者が明かす、世界を虜にする大ヒットの理由

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●映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』プロモーション映像
2015/07/16 に公開
公開日:2015年8月1日・9月19日連続公開 
公式サイト:www.shingeki-seyo.com
(C)2015 映画「進撃の巨人」製作委員会
(C)諫山創/講談社


現代ビジネス 2015年09月12日(土) Ko Ransam
(文/Ko Ransom・翻訳者)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45022

『進撃の巨人』の英訳者が明かす、世界的大ヒットの理由
世界を虜にする『進撃』のテーマとは

■進撃の巨人の「壁」と言語の「壁」

 『進撃の巨人』が私の心をつかんで離さない主な理由の1つに、世界が差し向けるさまざまな制約や困難に登場人物たちが立ち向かい、乗り越えていく姿が挙げられる。

 それは人類が巨人を倒す方法から壁の中で生きる術、果ては世界の謎を解き個人的な葛藤をどう解決するかに至るまで、実に多くある。
 大げさな対比をするならば、このテーマは私自身の日英翻訳者としての体験と共鳴する。

 アメリカ人と日本人の両親の元、アメリカの家庭に生まれた私は、幼少の頃から日本のポップカルチャーに強い興味を持ち、それを友達と共有したいという欲求が強くあった。

 自然と、自分がそのとき楽しんでいる日本のマンガ、ゲーム、おもちゃについて、学校で翻訳し説明するようになっていた。
 他の生徒の関心を集めるのは簡単で、私が紹介したたまごっちやポケモンなど、後々アメリカで爆発的にヒットしたものも少なくなかった。

小学生のときからすでに、私は言語の違いがもたらす「壁」について理解していて、何かをあるひとつの言語と文化から他のそれに翻訳する際は注意して扱わなければならないことをよくわきまえていた。
 その意味では、翻訳を選んだのは自然のなりゆきのように見える。
 だが、この仕事にたどり着くまでは、いくつもの紆余曲折があった。

 大学卒業後、私は横浜にあるアメリカ・カナダ大学連合日本研究センターで1年間勉強する予定だったが、最後の数ヵ月は2011年3月11日の大震災で断ち切られてしまった。
 震災によって何も被害を受けなかった幸運な1人ではあったものの、行われるはずだった授業はすべて中止された。

 疲れ切っていたが何かの役に立ちたく、私はボランティアチームと協働して、福島での原発事故について次々と明らかになる情報を正確に、かつ客観的に翻訳し伝え始めた。

 将来の職業としてそれまで翻訳はあまり考えていなかったが、この経験によって翻訳の重要性と、自分はいかにそれが好きかということを再認識することができた。
 そして、それまで日本で行っていた就職活動をやめ、私は翻訳の仕事に応募するようになり、運と粘り強さによってフリーの翻訳者として一本立ちできるようになったのだ。

■なぜ世界中で大ヒットしたか

 日本のポップカルチャーに対する自分の興味と、毎年英語に翻訳される膨大な量のマンガとが相まって、この分野での仕事はすぐに見つかった。

 『進撃の巨人』の英訳は他のマンガ同様、面白い制約やチャレンジにあふれている。

 私はこのシリーズの現在の翻訳者ではあるが、実は最初の担当者ではなく、英語版の8巻から携わった。
 想像に難くないように、別の翻訳者が中断したところから引き継ぐのはそれなりに困難な面があり、登場人物の話し方が変わらないようにしたり、すでに出来上がった用語を元に作業したりしなければならなかった。

 もちろん、優秀な前任の翻訳者と熱心な編集者の助けがあってこそ成し遂げられた部分も大いにある。
 マンガに加え、『進撃の巨人』関連のライトノベルや解説本にも携わることができ、読者が何の引っかかりもなく読み進められるよう、さまざまな用語に、より深く注意を払うことが必要であった。

 諫山先生の素晴らしいシリーズに自分なりの翻訳を与えられるよう、努力もしている。
 これは特に会話においてそうだ。
 この仕事で最も楽しいことのひとつは、登場人物どうしの会話を訳すことである。

 本作品にはたくさんの登場人物がおり、その分それぞれの個性を打ち出すのは難しい面もある。
 各人物が独自の「声」を保つよう、特別に注意しないといけない。
 一読者として最も好きな登場人物の中にアニやクリスタ、ユミルがいるが、8巻以降では彼らが本領を発揮するから、とりわけうれしい。

 日本国内外の多くの人から『進撃の巨人』の国際的な成功に驚いたと直接言われたりしたが、私にしてみれば当然のことである。
 本書が掲げる大きなテーマである「世界の中で生き残るために闘うこと」は、多くの人、特に社会的・経済的・その他さまざまな苦難の中で途方に暮れている世界中の若者が共感できるものであるからだ。

 フィクションは現実逃避の一手段である一方、より広いテーマや世の潮流を理解することを可能にし、このことが、広く多くの人に作品が支持されるカギであると思う。

 『進撃の巨人』のような作品を任された翻訳者として、ページ上の言葉をただ翻訳するのではなく、作品を本当に特別なものたらしめるこのような大事な考え方も失わないようにしつつ、英米人の読者に届けることが自分の役割なのだと感じている。

読書人の雑誌「本」2015円9月号より




諫山創/ シェルダン・ドルヅカ翻訳
『バイリンガル版 進撃の巨人1 Attack on Titan 1』
巨人がすべてを支配し、人間を餌とする世界。
人類は存亡をかけて戦いを挑む――絶大な人気を博している『進撃の巨人』のバイリンガル版コミック、ついに登場! 吹き出しの中は英語、コマの外に元の日本語を置いた形のマンガなので、自然な英語が無理なく身に付きます。
日英対訳でもページをめくる手が止まりません。





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